京都 蔵丘洞画廊

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絵と人に出逢う

梅原猛氏逝く

2019年1月

1月14日私の誕生日、新聞の一面は梅原猛先生93歳の死去を知らせるものだった。 無謀に20代の若き日、画廊開業をした私は、社会的信用が全く無く、当時(現在も)一等地であったこの本能寺の持つビルに入居するにあたり、金銭だけでなく保証人を用意するように言われた。
当時、京都市立芸術大学の学長をなさっておられた先生をこうして訪ねて以来、長きに亘りご指導ご厚誼をいただいた。(この時もうお一人の保証人は京都国立近代美術館の館長の河北倫明氏がお引き受け下さった)このご縁がなかったら今日の私はどうしていたのかと思う。
当時無名の画家を応援していた私は事あるごとに先生に批評文を頂戴したが、その原稿用紙に書かれた文字を判読することは常人には不可能であった。しかしこれは見方を変えると素晴らしいことで、このミミズが這ったような文字をそのまま揮毫してもらえば、とんでもない芸術品になると直感し、以後10年をかけて梅原哲学の言葉を揮毫してもらうことが成就したことは私の人生の偉大な出来事だった。
期待する内容とは違った出来栄えであったが、最初は画廊の20周年記念に頂戴したそれらを非売品として並べた。が、瀬戸内寂聴さんだけは私が非売品というのを信用なさらなくて、結果的に販売してしまった折のエピソードも忘れられない。またこの成果を観た髙島屋から、この展覧会を自分のところで売り物として開催してくれと申し入れがあり、結果その後の先生のサイドワークとなった。
それから何年かしたあるパーティの挨拶で、『著作も多くしたが、岡君が10年かけて私を書の世界へ、猿之助が5年かけて私を戯曲の世界へ導いてくれたことは自分の人生を豊かにしたこととして感謝している』と仰っていただいたことは望外の喜びでした。
今はただ、黄泉の国で変わらず楽しく知的探求を続けていかれることをお祈りするばかりです。
合掌

蔵丘洞主人 岡拝